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by chihiro_1984_20xx
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風味絶佳
風味絶佳
山田 詠美 / 文藝春秋
ISBN : 4163239308
スコア選択:
サインを頂いた本です。
山田詠美さんの本は、何度も言うように私の原点であるわけで。
この人の文章を読んだことによって、
私の世界が急速に明るく、広く、自由に広がっていった経験があったり、
その体験以降、同じような体験をしようといろんな本を読み漁るようになったという経緯アリ。
彼女の本によって、
落ち込んだ日、色んな現世のしがらみに足を取られそうになったり、
恋に苦しくなったり、切なくなってどうしようもない時、
本当に活字が恋しくなった時、
いろいろな時に、私自身を「開放」してくれた事が多々あります。
もうかれこれ付き合いは10年になるのですから驚きです。
詠美さんの本はだから結構読んでいるわけですよ。
時系列ごとに読んでいるわけではないけれど、
大体それがいくつの時に書かれたのかがわかる。
山田詠美というひとつの確立された同じ雰囲気を守りながら、
でも、彼女は自然に彼女らしく形を変えている部分を、その時その時で感じるのです。
「風味絶佳」は、「今」の詠美さんを如実に感じさせる本。
もう、偶然の重なり合いや、ラヴ・アフェアのドラマの中の恋愛を書いてはいないけれど。
もう、男女の営みの中に流れる密やかで心焦がすメイクラブを、読者に感じさせるような描写をすることはないけれど。
そこに、男がいて女がいる。女がいて、男がいる。
そんな当たり前のことをやっぱり素敵な文章で、素直な心持を描き出してしまえている。
当たり前の事をする、そして素直な気持ちを喋る。
だから登場人物は誰も彼も生き生きして、読んでいて、私を嘆息させるのでした。
あぁ、詠美さんが変わったと思ったのは、やっぱり、理由がある。
詠美さん自身の、文章を書くときの視点が変わっている。
初期のころのあとがきで、
彼女は「ひとつの恋愛をすると、30ページの小説が生まれる」っていっていたように思う。
それを表すかのように、同じような恋愛の形が時たま見えたり、
匂いが似ている文章を確かにいくつか感じなかったわけではない。
それに、詠美さん自身がその恋愛をしていたような生々しさが、
主人公だったり登場人物だったりから、本当に感じるのだ。
それだけ、視点はダイレクトに主人公とともにあったし、
言葉は彼女の身を切るように生まれていたように感じた。
でも、今の彼女の文章は違う。
そう感じ始めたのは、「姫君」からだろうか。
もっと前かもしれない。
相変わらず、主人公は、登場人物はダイレクトに心を言語化して私達に投げかけるのに、
詠美さん自身の視点はもっと上になり、彼女は傍観者になった。
物語は本当の意味でフィクションになり、
でも、だからこそ、詠美さん自身の言葉がどこかに残っていて、
旧来の読者はそれを強く感じるようになった。
詠美さん自身が落ち着いたからなのかもしれない。
穏やかな印象を受ける。
彼女自身も、セクシュアルでありながら、強いオーラのセクシュアルではなく、
密やかに人をひきつけるセクシュアルなオーラを感じた。
「顔も見たくない人がたくさんい」て(短編「風味絶佳」の1節)、
その上で、オーラを、一人の為に使っているものの余裕なのだろうか。
羨ましいな、こうなりたいと本当に自然に思えた。
そしていつも変わらず思うこと。
彼女は「心」と「人」の描写力がダントツにうまい。
どうしてこんなに小気味よく文章が書けるんだろう。
これは神様が彼女に与えた才能だろうなぁ。こっちも羨ましい。嘆息。
あとがきとか最高なんですよ。
独り言を彼女がつぶやいている感じで、それを私が横で聞いている気分になる。
見えない私に対して、彼女は締めくくる。同時に聞いていた私も思わず一緒に呟く。
まさに絶佳。
山田 詠美 / 文藝春秋
ISBN : 4163239308
スコア選択:
サインを頂いた本です。
山田詠美さんの本は、何度も言うように私の原点であるわけで。
この人の文章を読んだことによって、
私の世界が急速に明るく、広く、自由に広がっていった経験があったり、
その体験以降、同じような体験をしようといろんな本を読み漁るようになったという経緯アリ。
彼女の本によって、
落ち込んだ日、色んな現世のしがらみに足を取られそうになったり、
恋に苦しくなったり、切なくなってどうしようもない時、
本当に活字が恋しくなった時、
いろいろな時に、私自身を「開放」してくれた事が多々あります。
もうかれこれ付き合いは10年になるのですから驚きです。
詠美さんの本はだから結構読んでいるわけですよ。
時系列ごとに読んでいるわけではないけれど、
大体それがいくつの時に書かれたのかがわかる。
山田詠美というひとつの確立された同じ雰囲気を守りながら、
でも、彼女は自然に彼女らしく形を変えている部分を、その時その時で感じるのです。
「風味絶佳」は、「今」の詠美さんを如実に感じさせる本。
もう、偶然の重なり合いや、ラヴ・アフェアのドラマの中の恋愛を書いてはいないけれど。
もう、男女の営みの中に流れる密やかで心焦がすメイクラブを、読者に感じさせるような描写をすることはないけれど。
そこに、男がいて女がいる。女がいて、男がいる。
そんな当たり前のことをやっぱり素敵な文章で、素直な心持を描き出してしまえている。
当たり前の事をする、そして素直な気持ちを喋る。
だから登場人物は誰も彼も生き生きして、読んでいて、私を嘆息させるのでした。
あぁ、詠美さんが変わったと思ったのは、やっぱり、理由がある。
詠美さん自身の、文章を書くときの視点が変わっている。
初期のころのあとがきで、
彼女は「ひとつの恋愛をすると、30ページの小説が生まれる」っていっていたように思う。
それを表すかのように、同じような恋愛の形が時たま見えたり、
匂いが似ている文章を確かにいくつか感じなかったわけではない。
それに、詠美さん自身がその恋愛をしていたような生々しさが、
主人公だったり登場人物だったりから、本当に感じるのだ。
それだけ、視点はダイレクトに主人公とともにあったし、
言葉は彼女の身を切るように生まれていたように感じた。
でも、今の彼女の文章は違う。
そう感じ始めたのは、「姫君」からだろうか。
もっと前かもしれない。
相変わらず、主人公は、登場人物はダイレクトに心を言語化して私達に投げかけるのに、
詠美さん自身の視点はもっと上になり、彼女は傍観者になった。
物語は本当の意味でフィクションになり、
でも、だからこそ、詠美さん自身の言葉がどこかに残っていて、
旧来の読者はそれを強く感じるようになった。
詠美さん自身が落ち着いたからなのかもしれない。
穏やかな印象を受ける。
彼女自身も、セクシュアルでありながら、強いオーラのセクシュアルではなく、
密やかに人をひきつけるセクシュアルなオーラを感じた。
「顔も見たくない人がたくさんい」て(短編「風味絶佳」の1節)、
その上で、オーラを、一人の為に使っているものの余裕なのだろうか。
羨ましいな、こうなりたいと本当に自然に思えた。
そしていつも変わらず思うこと。
彼女は「心」と「人」の描写力がダントツにうまい。
どうしてこんなに小気味よく文章が書けるんだろう。
これは神様が彼女に与えた才能だろうなぁ。こっちも羨ましい。嘆息。
あとがきとか最高なんですよ。
独り言を彼女がつぶやいている感じで、それを私が横で聞いている気分になる。
見えない私に対して、彼女は締めくくる。同時に聞いていた私も思わず一緒に呟く。
まさに絶佳。
by chihiro_1984_20xx
| 2005-05-25 00:50
| 読書